in my case

自分のモノサシで測り、自分の目線で見た、50代を迎えた私のあんなことこんなこと

早く死んでくれと言われた犬

実家でマルチーズを飼っていた。

私が高校1年生の時に生後間もない時にやって来て、20歳近くまで長生きをした。

 

母曰く、私が飼いたいと言ったから買ってきたと言ったが、私は1度たりともその様なことを口に出したことがない。

叶えたいことは自分で、この当時からの私の考えで、『あれが食べたい』『どこかに行きたい』『あれが欲しい』など、母に対して言うことはなかった。

 

高校生になり行動も意識も外へ外へと向かう私を、どうにか家に向かわせようとした手段が犬を飼うと言うことに繋がったのであろうと推測する。

 

当時はネットもなく、犬を飼いたいと思ってもいなかったので、犬と暮らすための情報が全くない状態でこの犬は我が家にやって来た。

躾をする方法も、する必要性も分からなかったので、何も教えられることなく育っていった。

ただ、この犬は利口でトイレだけは早い段階で覚えていた記憶がある。

 

何も教えられることなく育ったこの犬は、他人には吠え、気に入らないことがあると怒り、今の私から見ると、とても可哀想な環境にいたと思う。

 

時が経ち、家を出た私や兄が帰省した時、兄が結婚してお嫁さんや子供たちを連れて帰省して来たお正月、この犬が家族の輪に加わることはなかった。

当たり前にように吠え続ける犬は、家族が集まる時はいつも他の場所に隔離されるのである。

 

歳をとり、犬は白内障になり目が見え難くなり、思う様に動けなくなると同じ頃から人間で言う認知症の様な症状も出て来た。

ずっと家に住んでいたわけではないので、わずかに家に滞在した時間と父から聞いた話ではあるが…

母は犬に対して、早く死ねばいいのにと何度となく口にするようになった。

 

食事も与える、トイレの掃除もする、犬に手を挙げるわけでもない、お世話をきちんとしていたと言えば、していたと思う。

けど、いつもお世話をしてもらっていた母から、歳を取って耳が遠くなっていたとは言え、早く死ねばいいのにと言われ続けた犬。

父の話では、それを言われた時はいつも、犬はそれはそれは悲しい顔をしていたらしい。

 

まだ子供だった私に

産むんじゃなかった。

出て行け。

感情のままに口に出していた母。

悲しい顔をした犬、辛かった犬の気持ちが私にはわかる。